Monthly Archives: December 1998

No.314 咽頭異物 坂本 克也

人間ののどは空気や飲食物を通す管ですが、咽頭と喉頭という2つの部分からなります。空気も飲食物も咽頭を下りていきますが、途中から空気は喉頭を通り 気管へ入っていきます。喉頭には喉頭蓋というふたがあり、ものを飲み込むときにはこれが閉まって気管へ入らないようにしています。飲み込んだ飲食物は咽頭 から食道へと入っていきます。 魚骨、もち、肉片等の食べ物のほかに、入れ歯、PTP(錠剤やカプセルの形の薬の包み)、硬貨、針、電池等、人間の飲み込むあらゆるものが咽頭の異物と なる可能性があります。この中で頻度の高いものは、やはり魚の骨ですが、御飯を丸のみにするやり方は取れる場合もありますが逆に押し込んでしまう危険性も あります。また、のどという所はとても敏感な場所ですので、魚の骨が抜けて小さな傷だけが残っているような場合でも、3~4日は痛みが取れないこともあり ます。いずれにしても気になるときには早めに近くの医療機関を受診したほうがよいでしょう。 もちなどの粘調な食べ物が異物としてのどに詰まると、窒息する可能性があり危険です。とくにお年寄りの方の場合は唾液(だえき)の分泌が低下していての どが乾燥した状態にあることと、せき込むことで異物を喀出する反射も弱くなっているため、若い人に比べて危険性が増すといえます。万が一ものがのどに詰 まって呼吸困難に陥っている場合は救急車を呼ぶ必要がありますが、完全に空気が通らない窒息の状態になってしまっているときは、救急車が来るまでの間異物 の排除を試みることも必要になります。 ▽頭の位置を低くした前かがみの姿勢にして、背中の左右の肩甲骨の間を強く数回たたく ▽親指と人さし指で舌をつかんで引っ張り、残りの指で下あごを持 ち上げて口の中をのぞき、異物が見えたら指などを用いてこれを取り除く。ただしこの場合異物を逆に押し込まないよう十分な注意が必要 ▽身体をおこして背 中側からわきの下に腕を通して抱きかかえるようにして腕を組み、こぶしをみぞおちに押しつけながら後上方へ引き絞るように一気に引き上げる。以上のような 方法があります。 咽頭異物は多くは不注意によるものですから、特にお年寄りや小さなお子さんのいる家庭では、もちなどは小さく切って飲み込みやすくする、子どもの手の届くところに硬貨、電池等危険なものを置かないといった日ごろからの配慮が肝要です。

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No.313 インフルエンザ 當摩 正美

昨年は小児の死亡者まで出した香港でのトリ型ウイルスによるインフルエンザが話題となり、わが国への襲来が心配されました。別名・流行性感冒とも呼ばれているこの病気は、ご存じのようにインフルエンザウイルスの飛まつ感染(空気伝染)でまん延します。 このウイルスにはA・B・Cの3型があり、大流行をみるのはA型とB型です。特にくせ者のA型はトリ・ブタ等動物と共通の株もあるなど種々の亜型があ り、毎年少しずつ病原性を変えたウイルスが流行します。そのため一度かかっても完全な免疫(抵抗力)はできず何度でも罹患(りかん)します。また突然全く 別の亜型ウイルスが流行の主流となると、そのウイルスに免疫の無い方が多く、世界各地で猛威を振るい国際的流行(スペインかぜ・アジアかぜ等)となりま す。 鼻やのどの粘膜にウイルスが付き増殖し炎症を伴う急性の呼吸器の病気を「かぜ症候群」といいます。インフルエンザも普通のかぜもほとんど同じ症状で「か ぜ症候群」の一つですが、同一ではありません。したがって、症状で一般のかぜとの見極めは難しいことも多いのです。ただし典型的なインフルエンザ感染は、 高熱・全身倦怠感・小児では消化器症状など全身症状を伴うので流行中は症状での推定診断も可能です。確定診断は、のどのぬぐい液からウイルスを証明するこ とですが、詳しい亜型までの検査は一般の医療機関では行っておりません。 治療ですが、特効薬はなく、もっぱら対症療法にとどまります。続発的な肺炎で毎年多くの方が亡くなっており、「かぜのようなもの」と軽視せずかかったら 安静をとり保温・保湿のうえ良質の栄養と水分の補給にも心がけましょう。予防に勝る治療無しとのことでワクチンがありますが、あらかじめ次の流行を予測し た型のもとで造られるワクチンでの効果の判定は難しく、実際流行するウイルスといかに合致するかが、カギとなります。有効期間は3カ月ほどとされています が、体力の低下した慢性疾患の方や幼小児・免疫力の衰えた老人・受験を控えた方はぜひ受けるべきです。生ワクチンや鼻粘膜へ噴霧など新しいタイプも研究さ れており、より簡易な、より有効性の高い予防法が期待されます。

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