Monthly Archives: March 2000

No.340 痴ほう 鈴木 聡彦

いったん正常に発達した知能が、後天的な脳の器質障害により低下した状態を痴ほうといいます。痴ほうの中核症状としては、ものを覚える記銘・記憶の障 害、場所や時間がわかる見当識の障害や性格の変化が現れ、それに伴う症状として、妄想や抑うつ、特殊な意識障害であるせん妄など多彩な症状が認められるこ ともあります。家族や介護者を実際に悩ませるのは後者の方が多いのです。 病的な痴ほうと健康老人の「物忘れ」との違いは、健康老人の物忘れは体験の一部を忘れるが、痴ほうの記憶障害は体験の全部を忘れること、健康老人の物忘 れは頻度が次第に増えても物忘れにとどまるが、痴ほうの場合は、ものを見てそれがそのものだと解る認知の障害や見当識の障害などに進行すること、健康老人 は物忘れを自覚し心配するが、痴ほう者では自分の欠陥を自覚しないことなどです。 痴ほうの原因としてはさまざまな脳器質性疾患、代謝、内分泌、中毒性障害など多岐にわたります。なお、老年期のうつ病の症状により痴ほうに見えることがありますが、抗うつ薬などにより軽快し、予後良好です。 痴ほうの根本的な治療は困難ですが、痴ほうの中には慢性硬膜下血腫など、原因がわかり、それを除去することですみやかに改善する「治療可能な痴ほう」もあるため、専門医に相談し、早期に診断を確実に行うことが大切です。 最後に痴ほう患者の介護は、できれば親しい家族がいる在宅で行うことが望ましく、介護者は、その人が残っている能力を十分に発揮しながら自分の世界で生 きていくのを支えてあげるという、本人のペースに合わせた受容的な態度で接し、その人格の尊厳を保ち、健常者の社会の常識や要求を押しっけないように配慮 することが大切です。 痴ほうその他の症状が家族の介護能力を超えるときには、医師や市役所の高齢福祉課に相談するとよいでしょう。

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No.339 アルコール依存症 青木 桃子

アルコール依存症とは、酒と人生の関わりの中で、酒のために自分にとってマイナスの現象が生じているのに、飲酒をやめることができない状態をいいます。目安としては次のような状態で判断します。①お酒を飲む量が1日平均日本酒換算で3、4合以上である。 ②晩酌という社会的慣習をはみ出し、朝酒、昼酒、時には仕事中でも飲酒する。 ③飲酒により、胃炎、胃かいよう、肝臓の病気などを起こして、医者から禁酒を言い渡されているにもかかわらず、酒がやめられない。また、酒を飲むたびに家族や近隣や職場の人たちに繰り返し迷惑をかけているにもかかわらず、いっこうに改められる様子がない。 これら3つの赤信号は、お酒に心がとらわれているために起こる状態で、飲酒に関するコントロールの障害(精神的依存症)ともいえます。また、次第に進行 して身体的な体質変化(身体的依存症)を起こします。幻覚症を起こしたり、アルコールが切れると、手足が激しくふるえて落ち着かない興奮状態となったり、 振戦せん妄など離脱症状が起こるようになります。生活に節度、きまりがなくなって、何事にもルーズになり、家族や社会に対する積極的な配慮や責任感が薄く なり、家族や他人に迷惑をかけることも気にならなくなってきてしまい、次第に家庭的社会的に孤立した状態に追いやられます。身体的には、神経炎、胃かいよ う、糖尿病、すい臓炎、肝障害、肝硬変などを引き起こします。適切な治療をしないで飲酒し続けると、早期に死に至ることもあります。 このようにアルコール依存症は、進行する病気で、早期に発見し、治療することが大切です。 治療にあたっては、節酒はもはやできない体質であることを認識し、断酒を行う必要があります。しかし、自分1人の力での断酒継続は難しいため、断酒会な どの自助グループに参加することをお勧めします。また、病院、特にアルコール専門病院における精神療法、抗酒薬療法などいくつかの方法を組み合わせ、多面 的に対処していくことが必要です。家族の方も病気であると理解し、協力することも大切です。

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