広報こしがや

1999年06月15日

No.325 クラミジア感染症 鈴木 徹

最近話題になっているクラミジア感染症の病原体であるクラミジアは、一般の細菌と異なり、細胞のない培地では増殖できず、動物の細胞内に侵入してはじめ て増殖できる性質を持つ、一般細菌とウィルスとの中間の病原体です。クラミジアには現在4種類ありますが、病気を起こすものは3種類です。これらによって 引き起こされる病気には、眼の疾患であるトラコーマ、他に尿道炎、子宮頸(けい)管炎、新生児肺炎をはじめとする性感染症、インコ・オウム類の愛玩鳥から 感染するオウム病が知られています。
クラミジアによる性感染 症
男性の尿道炎はかつて淋(りん)菌によるものが多数を占めていましたが、最近クラミジアによる尿道炎が多くなってきています。症状は軽く、排尿の時の不 快感や掻痒(そうよう)感があり、尿道口から透明な分泌物が出て来て、下着を汚す事があります。原因はほとんどが性交渉で、オーラルセックス(女性の咽 頭)から感染する症例が増えています。症状が従来の淋菌性尿道炎に比べて軽いため、気づかずにさらに女性の配偶者に感染させる危険が高いのです。女性の場 合クラミジアは子宮頸管を初感染部として、卵管炎から骨盤内感染(下腹部・腰部痛、帯下(たいげ)の増加など)を発症しやすいのですが、無症候性も多く、 卵管周囲癒着によって卵管障害性不妊の原因ともなり、その時点ではじめて気づく場合があります。したがいまして、治療はパートナーともども行う事が原則で す。妊婦がクラミジアに感染していれば、産道感染を通じて出生児結膜炎、新生児・幼児肺炎を引き起こす危険があります。
オウム病
性感染症とは別に、クラミジアに感染したインコ・オウム類のペット鳥の分泌物や排せつ物に含まれる病原体を気道から吸入して感染するオウム病があります。症状は軽度のインフルエンザ様のものから、多臓器障害を起こす重症型までさまざまです。
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診断は尿道炎の場合は尿検査で、子宮頸管炎の場合は頸管粘液検査、血中のクラミジア抗体測定で比較的簡単にわかります。オウム病の場合は医療側がその疑いを持てば簡単に診断がつきます。
治療は比較的簡単です。クラミジアに細胞壁がないため、細胞壁合成阻害によって細菌を殺すペニシリン系・セフエム系抗生物質は無効で、テトラサイクリン系・マクロライド系、一部のニューキノロン系抗菌剤が非常に有効です。

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