広報こしがや

1997年05月01日

No.278 臨床検査とは何か?臨床検査で何がわかるか? 森 三樹雄

医師が病気を診断し、治療する場合には患者さんからの病状や病歴を詳しく聞き取り(問診)、診察し、さらにX線写真や心電図を撮ったり、血液や尿などの 検査をし、これらの結果を総合して診断し治療を行います。臨床検査の目的は①病気の診断とその重症度の判定 ②治療効果の判定 ③治癒の判定 ④予後の判 定などを行う際に用いられます。  臨床検査には患者材料(検体)を取り扱う検査と直接患者を扱う検査の二種類があります。前者は患者から得られる血液、尿、糞便(ふんべん)などの検査で すが、これを「臨床検査」と呼んでいます。次に臨床検査でどのようなことがわかるでしょうか。まず、血液検査を行うと貧血の有無がわかります。尿検査で腎 臓の病気や糖尿病も発見できます。便検査でごく微量の消化管出血〔胃・十二指腸・大腸の潰瘍(かいよう)や癌(がん)など〕が発見できますし、顕微鏡検査 により寄生虫卵も見つけることができます。血液中の化学物質を測定すると、肝臓、腎臓、すい臓などの機能のよしあしおよび病気の種類もわかります。また動 脈硬化性の疾患については、血液成分のうち悪玉のコレステロール値が上昇し、逆に善玉コレステロールといわれるHDLコレステロールが減少します。糖尿病 患者では血糖が上昇し、痛風患者では尿酸値が上昇します。急性心筋梗塞(こうそく)の患者さんでは、血液中の酵素の値が上昇しますので、早期診断および予 後の判定に用いることができます。さらに関節リウマチや全身性エリテマトーデスと呼ばれる膠原病(こうげんびょう)では、リウマチ因子や抗核抗体検査が陽 性となります。B型肝炎、C型肝炎、エイズなどの感染症では、原因となるウイルス(抗原)あるいはウイルスに対する抗体を調べることにより、正確に診断す ることができます。  このほか、細菌感染症では喀痰(かくたん)、尿、便、血液などを細菌培養することにより、原因となる細菌を見つけ診断することができます。臨床検査は近 年、飛躍的な進歩をとげ、コンピュータを駆使して多くの検査が精密機械により自動的に検査され、正確な検査成績が主治医の元に返されるような時代になりま した。

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