広報こしがや

2004年09月01日

No.394 小児のお尻(肛門部)の病気 -特に裂肛と肛門周囲膿瘍について- 越谷ふれあいクリニック 根本 貴史

今回は、小児にもよく見られるお尻(肛門部)の病気についてお話ししようと思います。よくお母さん方が、「排便時に便の表面またはティシューに赤い血が付く」とか、あるいは「肛門周囲に赤く膨れあがったおできができた」と驚き、心配して来院されます。これら小児の代表的な肛門部疾患である裂肛と肛門周囲膿瘍について、日ごろの家庭での予防を含めた注意と治療について述べてみます。
▽裂肛…いわゆる切れ痔とも言われ、肛門の皮膚粘膜裂傷で、硬い便の通過が誘因と考えられています。主に乳幼児に、また女児に多く見られ、12時方向に多く発症します。症状は排便時痛や排便時出血(硬便の表面、オムツや紙に付着)です。また遷延化の場合、裂傷による肛門縁のしこり(見張りイボ)によって気付かれたりします。このしこりを心配して来院され、初めて裂肛に気が付かれるご両親もおられます。便秘による便硬にて肛門裂傷をつくり、またそれによる排便時痛のためさらに便秘が助長され、さらに裂傷がひどくなるという悪循環が形成されます。本症の背景には便秘が考えられますので、その治療にあたっては局所療法(清潔と抗炎症性注入坐剤など)とともに、繊維質を含む食事や緩下剤の服用によって便性を軟らかく維持して排便時痛を緩和し、排便習慣をつけることがとても重要となります。
▽肛門周囲膿瘍…肛門周囲皮下の細菌感染による急性化膿性炎症で、2歳以下の男児に好発し、主に肛門の3時、9時方向に発赤と腫脹が見られます。放置すると膿貯留、さらに炎症が進行して自潰によって膿分泌物の排出を認めたりします。したがいまして、多くのお母さん方は排便時あるいはオムツ交換時に、肛門部の所見(発赤、腫脹、排膿)に驚き来院されます。治療は炎症の程度によって異なりますが、局所療法としては抗生剤軟膏や抗炎症性注入坐剤の使用や、膿瘍形成に対しては切開排膿を要することもあります。また、広域抗菌薬や免疫能賦活作用として漢方製剤の内服もあります。これらの治療により全身的感染に広がることなくほぼ完治いたしますが、治療後も肛門周囲を清潔に保つことは言うまでもありません。
小児の裂肛や肛門周囲膿瘍の多くは治癒いたしますが、なかには治療困難(遷延例や再発例)な場合もあり、その際には専門医(小児外科医あるいは肛門科医)にご相談ください。

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