No.395 動物による刺咬傷 武重医院 武重 徹

動物による刺傷や咬傷は、現代でもしばしば遭遇する外傷です。我々が日常診療において頻度が高い犬、猫による咬傷を中心として簡単な治療法、対処法を解説します。
国内での詳細なデータは少ないのですが、米国では毎年数百万人が動物に咬まれ、30万人が救急外来を受診しています。大部分は子どもであり、犬や猫によるものが約9割を占めます。受傷後の感染率は、犬では数パーセント~10数パーセント、猫の場合はやや高く約30%~80%と報告されており、かなりの確率で感染を合併します。このため傷口がどんなに小さくても、汚染創として処置しなければなりません。傷が小さいからといって、医療機関に受診するのが遅れると感染が広がり、治療に難渋することになります。
実際に咬まれてしまった場合の対処法として、小さな傷の場合は咬まれた場所を水道水などで洗浄し、傷やその周囲に付着した汚染を取り除いたあと、早めに医療機関を受診してください。また傷が大きくまた深い場合には、場所によっては血管損傷、神経損傷の可能性がありますので、すぐに受診してください。
実際の治療は、まず創部位を滅菌生食水などで十分に洗浄したあと十分に消毒します。このときは神経や腱の損傷の有無に注意し診察しています。咬傷は感染の危険性が高いため、縫合はせず開放創とし3日~5日目に感染が生じていないことを確認後、創閉鎖を行うか、傷が小さければそのままとします。しかし受傷早期に十分な洗浄が行なわれた創や、血流の豊富な部位では一次閉鎖を行なうことがあります。
その後の破傷風の予防も大切です。破傷風トキソイドの接種歴がない方には、破傷風トキソイドと破傷風免疫グロブリンを予防投与します。トキソイド接種歴があっても、5年以上経過していた場合や、接種回数が2回以下の場合にはトキソイドを追加接種します。もちろん創感染のために広域スペクトルの抗生物質を数日間投与内服してもらいます。
狂犬病も気になるところですが、日本では40年以上も発生をみていません。しかし世界では毎年数万人が狂犬病で死亡しており、アジアやアフリカで多くみられます。わが国で治療を必要とするのは、海外で犬などに咬まれ、帰国後も発病予防のためワクチン投与を継続する方ですが、現在密輸入された犬などが流通しており、今後日本国内でも発生をみるかもしれません。
最後に、人間に噛まれた場合も同じように汚染された創ですので、もしも咬んだり咬まれたりした場合は、警察に行く前に、まずは医療機関を受診してください。

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