広報こしがや

2005年03月01日

No.400 貧血とて侮ることなかれ 弥栄医院 当摩 正美

一般には赤球数・血色素の減少をもって貧血の指標とし、検査の基本でもありほとんどの健診で実施されています。しかし、軽度の貧血や緩やかに増悪した貧血には症状も少ないせいか、基本健診で血色素がかなり低いことを指摘されても「毎年この程度なんです。何の症状もないので、ほうっておきました」等、意外なほど鈍感なのに驚かされます。
貧血には血液疾患としての一次性貧血と、ほかに原因となる疾患からくる二次性貧血があり、前者の代表は女性の8.5%にもあたるほど多いのですが、治療もしやすい鉄欠乏性貧血です。その他(胃切除5年後に発症しやすい)ビタミンB12欠乏や葉酸の欠乏による巨赤きょせき芽が球性きゅうせい貧血、造血の源である骨髄が不毛のため赤血球だけでなく感染防止の要となるのは白血球系や止血の役目を担う血小板も激減する再生不良性貧血があり、更には骨髄での異常で無効な造血により末梢血で赤血球・白血球・血小板の複数が減少するMDS(骨髄異形性症候群)があり、高齢化とともに増加しています。この病気には軽重の程度に大きな幅がありますが、進行すると白血病や前に示した再生不良性貧血に移行し治療に難渋することもあります。
一方、二次性貧血の原因疾患としては、消化器がん(胃・大腸)・その他の悪性新生物・潰瘍・胃腸炎・子宮筋腫・痔核・腎疾患・関節リウマチ等があり、他感染症に伴う貧血・更には食餌が摂れなくてみられる老人性貧血・極度のダイエットや偏食によってみられる若年性女性貧血が挙げられます。特に加齢とともに進む造血力低下や節食量減少のある高齢者に悪性腫瘍が潜伏し貧血だけが表面化していることも多く、精密検査や各種がん検診は出来る限り受けられるようお勧めします。急激に出血をみる以外、血色素7.0g/dl以下にならなければ症状は少ないのですが、列記しますとめまい・立ちくらみ・倦怠感・朝起き出来ない・動悸・顔色が悪い等循環器疾患と似た症状が多く、氷かじり・スプーン状爪(鉄欠乏性貧血)・舌が光沢を持つ(巨赤芽球性貧血)など変わった症状がみられることもあります。
一般には血色素男性13mg/dl・女性12mg/dl・60歳以上は男女とも11mg/dl以下が精密検査の対象ですが、1年に2mg/dl以上の低下も問題となります。該当される方は、たかが貧血と侮らず自分の貧血状態を正しく把握することが必要です。

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