広報こしがや

2005年04月01日

No.401 精神病に変化が起きている身近な心の病 越谷吉伸病院 中村 吉伸

高速道、コンピュータ、インターネット、その間隙を埋める見事なサービス網によって、時間と空間が短縮されました。私達はそのスピードについていくだけで精一杯です。便利さを手に入れる一方で、絶え間ないストレスであふれています。絶えず緊張をしていないと、すぐに置いてきぼりになってしまいます。そのうえ扇情的な宣伝広告、見ず知らずの人たちが集まり同時自殺ができるほどの情報網、あげくには倒産やリストラなど不況の嵐、次々と価値観も変わり、いつもストレスで一杯です。
こうして、それまで1万人台で推移していた自殺者数が、平成10年以降3万人を超え、平成15年には3万4427人と交通事故死の約5倍となりました。既遂者の10倍以上の自殺未遂者、そのまた数百倍ものストレスや不安・心配で悩む人がいます。精神病は決して人事でなくなっているのです。こんな症状で悩む人達の大部分は、精神科を受診さえすれば死なずに済んで元の生活に戻れたはずです。
そんなストレス疾患やうつ病だけでなく、今、精神科全体の病気や治療に大きな変化が起きています。精神病が他人事でなく身近なものになり、治療や方法・期間も大きく変化してきているのです。向精神薬や抗うつ薬等が急速に進歩し、症状に大変有効で、今まで気になった副作用も非常に少ないものがたくさんつくられています。外来だけか、もしくは例え入院するようになっても以前よりずっと短期の入院で済むようになってきました。
精神科の敷居がとても低くなり、ほかの一般科と変わりなく受診できるようになってきているのです。
治療方法や期間だけでなく、病医院自身も変化してきています。気軽に受診できるように、さらに細分化する作業が続けられています。ほかの一般科と同様に精神症状の救急だけを担当する部門、少し長期になった方を担当する療養部門、前述のようにストレスなどが引き金になった身体症状や不安・焦燥などを主な症状として診る心療部門、あるいは精神症状と身体症状を併せ持った合併症部門、認知症などのご老人を診る部門等に分けられてきているのです。
心が体のすべてをコントロールしているのです。もっと気軽に精神科を利用することをお勧めします。

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