広報こしがや

2005年10月01日

No.407 慢性硬膜下血腫について 工藤脳神経外科クリニック 工藤 吉郎

脳外科の病気で比較的多い疾患の中に慢性硬膜下血腫があります。重症頭部外傷直後の頭蓋ずがい内出血はよく知られておりますが、この病気は頭部外傷の後にゆっくりと頭蓋内に血液が貯留し、脳を圧迫し症状を出現してきます。多くは老人の男性で、飲酒家に多く、軽微な頭部外傷の後3週から3カ月後に症状を呈してきます。頭部外傷受傷直後のCTスキャンでは異常を認めないことがほとんどです。また外傷の既往がはっきりしない例もあり、抗凝固薬使用中の人にみられることもあります。
症状はいろいろ変化に富み、頭痛片、麻痺まひ尿、失禁言、語障害、意識障害、さらに精神障害を伴うこともあり、症状からはアルツハイマー等認知症疾患との鑑別が困難な場合があります。
診断はCT、MRIを施行すると明白で、血腫が脳を圧迫し、脳がゆがんでいるのが分かります。
治療は血腫の量にもよりますが、手術が主体となります。手術は脳外科の手術のうちでは比較的簡単で、頭蓋骨に穴を穿頭せんとうして血液を頭蓋外へ導出し終了します。
手術後、予後は比較的良好な経過を取り、症状は多くの場合軽快します。
アルコールの好きな老人男性で数週間前に軽い頭部外傷を受け、上記症状にあてはまることがあれば精密検査を受けて下さい。

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