No.284 胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌 石川 茂子

ロックバンドに登場し、マスコミでも取り上げられるピロリ菌とは一体何者であろうか。  従来から酸度の高い胃には細菌が棲息(せいそく)しないものと考えられてきました。ところが1983年、オーストラリアの医師が胃内に細菌を見つけヘリ コバクターと名付けました。この菌はウレアーゼ活性を持ち、アンモニアを作り胃粘膜を傷害するため、経口摂取すると急性胃炎を起こします。胃疾患との関連 で当初、ピロリ菌陽性者の胃・十二指腸かいようは難治性で、かつ再発率が高く、除菌により治癒し、再発率も低下することが報告されました。  ピロリ菌の陽性率は年齢とともに上昇し、慢性胃炎の一種の萎縮性胃炎も高齢者に多くなることより、両者の関連性が推測されています。近年、胃がんり患率 とピロリ菌陽性率の地域分布がよく一致し、胃がん患者での陽性率が非胃がん患者に比べ高いことより、ピロリ菌感染と胃がんの関係が話題になっています。  1994年、WHOは「ピロリ菌は、明らかに発がん性がある」と認定し、肺がんにおける喫煙と同程度に胃がんとピロリ菌の関係を位置づけました。胃がん の多い我が国では大いに関心がもたれるところです。50歳以上のピロリ菌陽性率が70~80㌫と他の先進国に比べて高いのは、この年代の幼児期の上・下水 道事情が後進国並で衛生環境が悪かったためと考えられています。  ピロリ菌に感染して必ずしも胃がんとなるわけではありません。胃がんは萎縮性胃炎-腸上皮化生-胃がんの段階をたどるといわれています。ピロリ菌が萎縮 性胃炎を起こすことはほとんどの学者が認めていますが、まだ不明な点が多く、恐らくがん発生に関与するがん遺伝子に働きかけているのではないかと推測され ています。体にはがん発生を抑える防御機構があるので、感染しているからといってパニックになることはありません。  ピロリ菌の検査、また抗生物質を中心とした除菌治療もある程度確立されていますが、残念ながら保険適用が認められていません。ピロリ菌と胃がんとの関係 を確実にするための介入試験が全国規模で始まりましたが、この間題が解決されれば、将来保険適用への道がひらけるものと期待しています。

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