広報こしがや

2008年07月01日

No.440 更年期症候群 峯クリニック 佐藤 直樹

女性の一生は卵巣ホルモンから大きな影響を受けています。中でも卵胞ホルモンが主役です。この卵胞ホルモンは45歳前後になると、血中濃度が急速に低下をはじめます。この下降が、以下に述べるいろいろな症状の原因となります。これが更年期症状で、一般に不定愁訴とも言われています。更年期症状は多彩でしかも個人差があります。主なものは、のぼせ、ほてり、頭痛、不安感、不眠、イライラ感、尿漏れ、残尿感や性交痛です。性交痛は萎縮性膣炎が原因です。これらの症状は病気として自覚しない程度のものから、日常生活に支障をきたすものまで重症度に個人差があります。卵胞ホルモンは脂質代謝や骨粗しょう症にも関係があります。骨からカルシウムが流失するのを防ぎ骨折を予防すると考えられています。骨折の頻度は男性と比べ女性の方が低いのですが、45歳以降では女性の方が高くなり大腿部の骨折で寝たきりになるリスクが増加します。また、顔の皮膚も卵胞ホルモンの影響を受けます。卵胞ホルモンにはコラーゲンを増やす作用があるので肌を若く保ちます。
更年期症状は、ホルモン補充療法で卵胞ホルモンの急速な低下を抑えることによって改善されます。ホルモン補充療法にはいろいろな方法がありますが、初めの2週間は卵胞ホルモンを服用し、次の1週間は卵胞ホルモンと黄体ホルモンとを併用するのが普通です。休薬期間をおいてこれを繰り返します。卵胞ホルモンとして使用する薬剤は、妊娠中の馬の尿から抽出してつくられています。その他合成剤もあります。
卵胞ホルモンを4~5年間服用し続けると乳癌の発症をうながすという報告もありますが、結論はまだ出ていません。それでも長期間服用する場合は定期検診が必要です。ホルモン補充療法が子宮体癌を発症させる心配はほとんどないと言われています。子宮頚癌の原因はヒト・パピローマウイルスの感染であり、ホルモンとは関係ありません。大腸癌の発生は、ホルモン補充療法によって減少すると言われています。
厚労省は平成20年3月1日から「女性の健康週間」と位置づけて女性の健康づくりに積極的に関与していくことを表明しました。これを機会に更年期の健康管理に関心を持ち、高齢期の人生を快適なものにすることが大切です。

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