広報こしがや

2008年08月01日

No.441 認知症と物忘れ 慶和病院 樋口 和博

急速に少子高齢化が進む日本の社会において、認知症という病気についての理解は、今後ますます重要になってきます。
認知症の症状は数多くありますが、重要な症状の一つとして、記銘力の低下があげられます。銘力の低下とは、わかりやすく言うと、物忘れしやすくなるということです。最近は認知症について、テレビなどで紹介される機会も多くなりました。その時、初期の症状として、記銘力の低下が指摘されます。番組を見た後に、年をとって物忘れが多くなったので、「自分は認知症ではないか」と心配される方もでてくると思います。特に高齢の方に多いのではないでしょうか。
このような場合、ほとんどは加齢による記憶力の低下であり、実際の認知症であることはまれです。それでは、物忘れの点から認知症の疑いが強いということは、どのようにしたらわかるのでしょうか。
認知症の場合は、自分が物を忘れているという自覚が乏しくなります。「忘れていることを忘れてしまっている」ので、自分で物忘れを自覚していることは少なく、周囲の人によって気付かれることがほとんどです。逆に考えると、自分で「認知症ではないか」と思っているうちは、認知症については、あまり心配する必要がないとも言えます。
自分が認知症なのではないかという心配が強い場合は、そうでないということを診断してもらって安心するために、専門の病院を受診するのも一つの方法です。それでもどうしても心配が強く、気分が落ち込んでしまうようなときは、認知症とは異なるうつ病など別の疾患を疑う必要があります。
うつ病でも認知機能が低下するという症状が現れますが、うつ病の場合は薬物療法が有効なことが多く、病気の改善とともに認知機能も改善します。自分が認知症なのではないかという心配や不安が強く、食欲が低下したり、夜眠れなくなったりするような症状がある場合には、精神科専門の医療施設を受診することが望ましいでしょう。

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