広報こしがや

2010年05月01日

No.462 「透析者」の長生きの秘訣 越谷大袋クリニック 大薗 英一

身内やお知り合いで、腎臓が悪くなり透析を利用している方はいませんか?
腎臓はとり過ぎた塩分や水分、体の老廃物・代謝物を捨てる働きをしています。腎臓の代わりにこれらを取り除く治療を人工透析といい、利用している「透析者」は全国で約 28万人(平成21年末)います。
人工透析には大きく分けて、血液透析と腹膜透析があります。血液透析は血液中の老廃物を取り除き、きれいにしてから身体に戻す方法で透析者の95%が利用しています。腹膜透析は、体内に留置したカテーテル(管)を通して自分でお腹の中に透析液を入れ老廃物を取り除きます。血液透析に比べ病院に通う回数は少ないですが、腹膜に負担をかけないために5~10年で血液透析に移行します。一昔前は透析で5年命が延びれば、と言われていましたが、今では透析を利用して体をリフレッシュさせ、元気に持って生まれた寿命を楽しめる時代になりました。透析を生活の一部として30年以上健康的に暮らしている方がたくさんいます。そこで、透析者が元気で生活していくための秘訣についてお話しします。
血液透析は、週に2~3回、1回3~5時間かけて行うため時間が長く感じ、少しでも短くしたいと思いがちです。しかし本来腎臓は24時間365日働いています。老廃物を捨てる効率を見ながら30分でも1時間でも長く透析することをお勧めします。また最近ではどの透析施設でも透析液清浄化の努力をしています。純度の高い透析液(ウルトラピュア~無菌化)で透析をすることはとても大切です。
食事が体に与える影響は大きく、特に減塩が重要です。人間の体は、摂った塩分をすべて体内に溜めこもうとします。するとバランスをとるために、塩分8.2gあたり1kgの水が体に溜まり、肺水腫や心不全を引き起こすことがあります。また、ご自身の病気をよくご存知でしょうか。腎臓だけの場合もあれば、他の病気をお持ちの場合もあります。どれにも負けないようにしっかり備えて、付き合っていくことがミソです。
そしてもうひとつは、ご本人の気持ちです。「気を付けながらも良く食べ、心がけて歩き、意識して運動することが良い」とは、ある透析者の言葉です。病院で治療を受けるのではなく自分が透析をするのだ、という気概こそが患者ではない「透析者」になるのだと。私たち透析医療の従事者も、透析者に良いサポートができるように日々努力をしています。

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