広報こしがや

1998年03月15日

No.296 乳房を失わずに乳がんを治す -乳房温存療法- 野崎 美和子

乳がんは、女性の病気の中でとても重要な疾患の一つです。欧米では、女性のがんの中でもっとも数が多く、日本でもその数は年々増加しています。
乳がんの治療は、かつては乳房全体とその周囲の筋肉やリンパ節を広い範囲に切除してとる手術(乳房全摘術)が主流でした。しかし、医学の進歩によって乳 がんは早期に発見されることが多くなり、また、乳がんのある段階のものでは、乳房全摘術をした場合と乳房温存術(がんのある場所とその周囲だけをとり除く 手術)をした場合とを比べてみると、治る確率に全く差のないことがわかってきました。ただし、どちらの手術も再発を防ぐために、手術の後に抗がん剤や放射 線治療などの補助療法が必要です。とくに、乳房温存術の場合は残った乳房への放射線治療が不可欠です。
放射線というと原爆などのイメージから、ちょっとびっくりされるかもしれませんが、放射線治療とは、手術の後に残っているかもしれない微小ながん細胞を 殺すための効果的な治療法なのです。放射線は目に見えず、からだにあたっても熱くも痛くもありません。副作用を心配される方がいらっしゃるかもしれません が、放射線による悪い影響は、必要な場所以外に放射線があたってしまったり、また、一度にたくさんの放射線があたってしまうことにより生じるものなので す。乳房に放射線をかける場合は、治療技術によって、乳房以外の場所にはほとんど放射線があたらないように工夫できます。また、毎日少しずつ放射線をかけ ることによって、多くの副作用は軽減されます。乳房温存術後の放射線治療は、1回に5分間ぐらいで、だいたい5週間行います。長くて大変と思われるかもし れませんが、この毎日少しずつ治療することが、副作用をおさえて病気を治すためにとても大切なことなのです。
乳房温存療法は、すべての乳がんに適しているわけではありませんので、専門医によくご相談なさるとよいと思います。どんな治療法を選ぶかは、病気になっ たご本人の意志がとても大切です。乳がんは、不治の病ではありません。ただ単に秦治す時代紳から、秦いかに美しく治すかの時代紳になっています。

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