広報こしがや

1998年06月15日

No.302 肺がん検診 松村 公人

65歳以上人口が7㌫以上に達すると高齢化社会に突入したと見なされ、1995年以降では14㌫と確実に高齢化社会の真っ只中であります。
高齢化社会に突入後肺がんの死亡率は増加の一途をたどり、男女合わせて年間に4万5000人が死亡する段階に至っています。
肺がんが、がん死亡の第1位を占める男性では、喫煙の浸透はきわめて深刻で、がん発生に寄与するその危険性は70㌫と見なされています。
他30㌫は、大気汚染、職業性の発がん物質への暴露、食物等の環境性危険因子に、遺伝の影響、発がん物質に対する感受性の個体差、日常生活上でのストレス等が挙げられます。
一方女性では、非喫煙者が多く、肺がん増加の背景には間接喫煙、環境変化、食生活の変化、ストレス等が考えられますが、その背景因子の疫学的解析は困難であります。
肺がんでは、治癒手術が可能であった早期例のみ長期生存が得られることから、可能なかぎり無自覚、無症状な状態で発見されることが絶対条件であります。
このような早期発見を意識した対応が必要となりますと、検診で施行されている秦胸部X線検査+かく痰細胞診紳以外に利用できる、より有効な手段は現時点では見られません。
肺がん検診では秦死亡率の減少紳が得られないことからその有効性が疑問視されていますが、評価するには受診率はあまりにも低く、ちなみに昨年度の越谷市での場合わずか8・3㌫であります。
検診の有効性は、①検診の場にどれだけの多くの人が参加し ②受診者がどのように診断され ③異常発見者がいち早く治療の場へ導かれるかで評価されます。
さて検診発見例での手術切除率、予後は間違いなく良好であります。
検診対象者はもとより、1日20本以上20年間の重喫煙者、最近血痰を経験された人は検診の絶対適応です。
がんは遺伝することから、ご家族にがん患者がおられ肺と発生学的に同じくする臓器がん(胃、食道、口腔、咽頭喉頭、肝臓、すい臓、胆のう等)の場合にもぜひに検診をお勧めします。
肺がん死亡増加の抑制と減少を実現させるためには、秦禁煙の徹底紳による一次予防と秦早期発見紳の二次予防に向けて、医療関係者はもとより一般の人々の理解と努力の併合が肝要であることは言うまでもありません。

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