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2017年05月17日

No.546 知っていますか? 乳がんのこと 乳腺レディースクリニック越谷 石綱一央

乳がんはもともと欧米人に多い疾患ですが、食生活やライフスタイルの欧米化に伴い日本でも急増しています。日本においては年間で9万人近くの女性が新たに乳がんと診断されており、12人に1人の女性が一生涯のうちに乳がんを発症するとされています。発症年齢は他のがんと異なり、30代後半から急激に増加し、40代後半から50代前半にかけて最も多くなることが特徴です。
 そもそも乳がんとは一体どのような疾患なのでしょうか。乳房のしこり(腫瘍)にはさまざまな種類がありますが、その中でも乳房の中の乳腺組織に出来る悪性腫瘍を乳がんといいます。乳腺組織には母乳を産生する小葉と母乳の通り道である乳管があり、小葉とその周辺の乳管を併せて終末乳管小葉単位と呼びますが、乳がんの多くはこの終末乳管小葉単位から発生します。乳がんは他のがんと同様、遺伝子異常の蓄積により発生しますが、その発生や進行に女性ホルモンであるエストロゲンが関わっている点が大きな特徴です。日本も豊かになり栄養状態が良くなったことで女性の成長年齢は早くなりました。そのため若い年齢から初潮を迎えるようになり、女性ホルモンの活動時期が長くなったことが乳がん増加の大きな誘因となっています。
 昨今の報道の影響もあり乳がんは非常に怖い印象を持たれていますが、実際は非常に治りやすい疾患です。大きさが2センチ以下で脇の下のリンパ節に転移のない乳がんを早期がん(ステージⅠ)といいますが、早期がんは適切な治療により9割以上完治します。そのため乳がんによる死亡リスクを下げるためにはより早期の段階で発見し治療することが大切です。乳がんの最も多い症状はしこりです。月に1回は自己検診を行い、しこりがあった場合は必ず専門の医師の診察を受けてください。
 しかし、しこりとして自覚できる大きさは乳房の大きさにもよりますが通常1センチ以上とされています。そのため、より早期に乳がんを発見するためにも最低2年に1回、可能であれば年1回は定期検診を受けていただくようお願いいたします。

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