広報こしがや

1998年10月01日

No.309 子宮がん検診 佐藤 辰之

正常細胞が、がん細胞に変化した状態をがんといいます。人間の体は約60兆の正常細胞から成り立っていて、一つ一つの細胞は組織や臓器によりその大き さ、形はさまざまで、働きもいろいろです。正常細胞が複雑な過程を経てがん細胞に変わるのですが、どの細胞もがん細胞に変わるわけではありません。
例えば完成された細胞は一定期間働き、その機能を果たすと老化、退化し、新しい細胞に置き換えられます。がん化する細胞は新しい分化しつつある細胞または不分化の細胞なのです。
子宮頸がんは正常細胞から異形成細胞(軽度、中等度、高度)、そしてがんへと進行します。がんの発生は化学物質によるもの、物理的原因によるもの、ウイルス感染によるものといろいろ考えられていますが、すべて絶対的なものではありません。
今や、がんは遺伝子病であるといわれる時代となり、細胞増殖や機能を制御するのは遺伝子であり、多くのがん遺伝子とがん抑制遺伝子が発見され、さらに分 子生物学の発展に伴いヒトパピローマウイルス(HPV)が、子宮頸がんの発生に関係している事も明らかになり、がんの予防や治療に利用されつつあります。 いずれ近い将来には、遺伝子の病気であるがんを遺伝子操作によって治す事のできる時代が来るかもしれません。
しかし現時点においては検診を主体とした早期発見、早期治療に勝る手段はありません。最近は全国的にも検診の受診率に「かげり」が見えてきましたが、末受診者からはⅡ~Ⅵ期の進行がんが発見される事も多いのです。
また、一度正常と判定されると、それがいつまでも続くものと錯覚する人がいますが、細胞は常に増殖、分裂と動的に働いて変化するため、検診は毎年受診し なければ早期発見、早期治療に結びつきません。できる限り多くの女性が自覚症状のないうちに検診を受けて、がんから身を守ってほしいと思います。

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