広報こしがや

1999年02月01日

No.316 くも膜下出血-特に脳動脈瘤について 工藤 吉郎

人間の脳は髄液という水と、くも膜で表面を覆われています。この部分をくも膜下腔と呼び脳の血管が走行し、ここでの出血をくも膜下出血といいます。出血 の原因は大部分が脳動脈瘤(どうみゃくりゅう)という血管の秦こぶ紳の破裂で、ときに若い人では、脳動静脈奇形といって生まれつきの脳の血管の奇形からも 出血することもあります。
くも膜下出血の症状は突然の激しい頭痛(特に後頭部痛)、おう吐、意識障害で発症します。意識障害は出血の程度によりまったく意識障害を伴わない人から 重篤な意識障害を呈する人まで変化します。脳の内部に出血が広がりますと、手足のまひが出現します。また髄液の流れの障害による水頭症の症状、さらに出血 より1~2週間後、脳血管れん縮といって脳血管が細くなり、血液の流れがわるくなる脳こうそくの症状も出現することもあります。脳動脈瘤の破裂によるくも 膜下出血が怖いのは死亡率が高いことで、再出血を生ずるとさらに死亡率は上昇します。
くも膜下出血は発症直後はCTスキャンで大体分かりますが、発症数日後のCTでは少量の出血の場合血液が洗い流されて、くも膜下出血が分からない場合があります。突然の頭痛が生じ頭痛が長引く場合は専門医に相談してください。
動脈瘤の診断は脳血管撮影で確定しますが、危険を伴い簡単にできる検査ではありません。これに対し、MRIは造影剤を使用しないで、脳血管を安全に検索 することができ、ある程度の大きさの脳動脈瘤は外来で確認することができます。MRIの出現により無症状の脳動脈瘤がかなり手術されるようになってきまし た。
脳外科では、くも膜下出血を確認すると、ただちに脳血管撮影を行い病巣を確認し脳動脈瘤に対しては再出血を防ぐ手術を行います。動脈瘤の手術は開頭し顕 微鏡を用いて脳を傷つけないように動脈瘤に達し、動脈の流れを閉塞することなくクリップで動脈瘤の秦こぶ紳の根元を遮断し出血を防ぎます。最近では血管内 手術といって大腿の動脈よりカテーテルという管を脳血管まで通して動脈瘤のなかに細いワイヤーをいれて凝固させ出血を防ぐこともあります。

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