広報こしがや

2000年04月01日

No.341 前立腺がん 諸角 誠人

前立腺(せん)は男性生殖臓器のひとつで、膀胱(ぼうこう)の直下、直腸の前に位置します。このため、前立腺に異常が発生しますと排尿に関する異常が出 現します。前立腺が大きくなる疾患として、前立腺肥大症と前立腺がんが代表的なものですが、今日は前立腺がんについて書きたいと思います。
前立腺がんは米国ではすでにり病率第1位、死亡率第2位となっており、世界的な傾向として先進諸国で急増しています。日本も例外ではなく、21世紀前半には悪性腫瘍(しゅよう)の中でも上位を占めるものと予測されています。
症状として前立腺がんに特有のものはなく、排尿し難いあるいは回数が多いなど排尿に関するものが多いようですが、腰が痛いなどの骨への転移によって生じ る症状でみつかる場合も少なくありません。診断は前立腺組織の一部を取る前立腺生検によりなされます。それ以外の補助的診断として、前立腺触診、前立腺超 音波そして血液検査の前立腺特異抗原(PSA)の測定があります。特にPSAの測定はスクリーニングとして有効な検査でありPSA測定により前立腺がんの 早期発見が可能となってきました。前立腺がんの診断がなされた後に、臨床病期(どこまでがんが拡がっているかを示す)をCTスキャン、MRI、骨シンチグ ラムなどにより決定します。臨床病期は前立腺肥大症手術時に偶発的に発見されたA期、がん病巣が前立腺内に限局したB期、前立腺被膜を越えて周囲に浸潤し ているC期、他臓器に転移しているD期に分類されます。
前立腺がんの治療には手術(前立腺全摘除術)、放射線、ホルモン療法(男性ホルモンを遮断する治療)があり、それぞれ効果が認められていますが、最も確 実な治療法は手術とされています。しかし、手術の難しさやほかの治療の有効性などから、臨床病期に応じた治療方法が選択されます。A期の前立腺がんの場 合、無治療経過観察から手術、放射線まで幅広い選択があります。B期は手術が第1選択になり、放射線治療も含まれます。C期はホルモン療法に放射線や手術 を併用することがあります。D期はホルモン療法となります。
いずれの治療にも一長一短がありますので、泌尿器科専門医とよくご相談のうえ、判断することが大切です。

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