広報こしがや

2001年10月01日

No.359 小児の日帰り手術 越谷ふれあいクリニック 土屋 博之

Q5歳男子、ソケイヘルニアで手術予定ですが寂しがり屋で入院が不安です。日帰りで手術できないでしょうか。
Aご質問にお答えする前に、まず、子どもの鼠径ヘルニア(外鼠径ヘルニア、よくいわれる脱腸)についてお話ししたいと思います。子どもの場合は、同じ病名 でもお年寄りにみられる筋肉が弱くなって起こる(内鼠径ヘルニア)のとは違い、先天的なヘルニア嚢の残存によります。手術は、男女の差はなく基本的にこの ヘルニア嚢の高結紮術のみでのみで、手術時間は10分前後と短く、鼠径部の手術も1㌢弱で術後瘢痕も残りません。したがいまして手術侵襲や術後疼痛は、日 ごろ元気なお子様であれば全く問題ありません。
さて、ご質問についてですが、親子分離される入院の不安や恐怖はしごくもっともな事であり、また、入院期間中の医療費負担、お子様の休学やご両親の休 職、院内感染など多くの入院に伴う問題が生じてまいります。これらの問題を解決すべく、欧米でいちはやく取り入れられたのが、入院することなくその日に手 術を行い、その日に帰宅する「日帰り手術」(デーサージャリー)です。遅れること20年、わが国でもまず小児病院で導入され、最近では人材(医師、看護 婦)、設備(手術室、回復室)、条件(医療過疎地域でなく都市部の医療機関)の整った施設で、鼠径ヘルニアに限らず、陰嚢水腫、包茎、停留精巣、良性腫瘤 や肛門疾患などに対して日帰り手術が行われています。ご質問者のお子様に対する日帰り手術は、まさにご心配な問題を解決する最善の方法と思われます。お子 様の年齢も5歳と、新生児や乳児の多くの面でリスクを負う低年齢層でもありませんから、日帰り手術に熱心に取り組んでいる施設であれば、小児外科専門医に よる鼠径ヘルニア手術は、術前(術前全身チェックと検査)・術中(麻酔専門医によるマスク麻酔下での手術)・術後(鎮静と術後包交)を通じ、安全に行う事 ができますのでご安心ください。

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