広報こしがや

2002年06月01日

No.367 肝機能異常 小尾医院 大図 亨子

Q43歳の男性です。会社の健康診断で肝機能異常を指摘され、精密検査を受けるように言われました。
最近、肥満傾向で体重は増えましたが、自覚症状はまったくありません。病気なのでしょうか。
A自覚症状がまったくなく、肝機能異常を指摘されている場合は、急性肝炎ということは少なく、主に慢性の肝障害であることが多いようです。
慢性の肝障害を起こす病気として、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、薬剤性肝障害、脂肪肝(アルコールや肥満による)等があげられま す。質問の男性は、体重増加ということより、脂肪肝による肝機能異常であることが考えられますが、その他の病気も合併している可能性もありますので、精密 検査は必要です。
慢性の肝障害を起こすウイルスとして、現段階でわかっているのは、B型およびC型肝炎ウイルスですが、そのウイルスによる慢性肝炎の場合、進行して肝硬 変となり、さらに肝細胞がんが発生することがあります。日本での肝硬変の成因としては、ウイルス起因性のものが最も多く、肝炎ウイルスの中では、C型肝炎 ウイルスが大半を占めています。また、肝細胞がんの9割近くが肝炎ウイルスを成因としており、やはりC型肝炎ウイルスが占める割合が多くなっています。し たがって、ウイルス性肝炎の進行を抑え、肝細胞がんの発生を遅らせなければなりません。そのためには、肝臓に針を刺して組織を取り出して調べる「肝生検」 という検査も含めた精密検査の後、必要であれば、インターフェロン療法等の治療を受けた方がよいでしょう。現在はC型肝炎に対してインターフェロンのほ か、飲み薬のリバビリンという抗ウイルス薬も使われています。
肝炎ウイルスのほか、アルコール、自己免疫、薬剤等による肝障害および脂肪肝も、血液検査、腹部エコー、CT検査等(必要に応じて肝生検)、精密検査を 受けることにより、診断がつきます。それぞれの病態にあった適切な治療が必要ですので、健康診断で肝機態異常を指摘されたら、医療機関で受診することをお すすめします。

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