広報こしがや

2002年12月01日

No.373 エコノミークラス症候群 ハラクリニック 原 直

近年海外旅行にいく中高年の方で、特に10時間前後に及ぶ長いフライトのあと目的地に到着し、席を立とうとしたとき、または立ち上がってしばらくした 時、途端に具合が悪くなり、ひどい時には呼吸困難に陥る人がいます。長時間に及ぶフライト後だったことやエコノミークラスの狭いシートでずっと同じ姿勢で 座っていたことなど、その原因として考えられる共通点から「エコノミークラス症候群」と言われるようになりました。
エコノミークラス症候群はなぜ起こるのでしょうか。足の血液は、心臓から一番低い所にあるため、日常生活では筋肉の収縮の力で順調な循環が成り立ってい るのです。ところが、長時間同じ姿勢で座り続けると、血液の流れは遅くなり血の塊ができやすくなります。これが血栓で、飛行機が到着して席を立ったときな どに足にあった血栓が動き出し一気に太い静脈の流れに乗って心臓に達します。心臓から肺に向かい、血栓が細い肺の血管を塞いでしまい酸素交換ができなく なって呼吸困難を引き起こすのです。ショックになったり、最悪の場合死に至ることもあります。すなわち肺動脈血栓症です。ビジネスクラスやファーストクラ スに乗った人にも起こり得ます。また電車やバスなどの交通機関、あるいはデスクワークや劇場などでも長時間同じ姿勢で座り続け、足を動かす余裕のない場所 でも起こる可能性があります。
では、どうすれば防げるでしょうか。血液循環をよくするため腹部を圧迫しないゆったりとした服装を選びましょう。飛行機の中の湿度は20㌫前後と乾燥し ているため、脱水症状が起こりやすくなっています。この脱水が血栓を作りやすくするため、ペットボトルなどで十分に水分をとると良いでしょう。また、過度 のアルコール摂取は、脱水になりやすいため控えましょう。トイレに行く際、屈伸運動やストレッチを行うのも効果的です。着席中でも足の運動をするようにし ましょう。ひざを左右交互に持ち上げる、座ったままつま先立ちをする、またはかかと立ちをするといった具合です。
ちょっとした気遣いと運動でエコノミークラス症候群は予防できます。

過去のホームドクター