広報こしがや

2003年03月01日

No.376 乳癌の話 越谷誠和病院 相良 哲郎

乳癌は怖いという印象がありますが、これは他の癌に比べて、比較的若い40代に多いのが特徴で、このため乳癌で亡くなられる場合、特に悲惨な思いをするためだと思われます。乳癌も早期発見が大切で早期であればほとんど完全に解決されます。
乳癌発見のきっかけとなるのは、乳房に触れるしこりであることが一番多いですが、しこりといっても色々あって、大部分は乳腺症で、この他、良性の線維腺 腫のことも多いです。また、血性の乳汁も要注意ですが、これも癌とは限らず、乳管の乳頭腫のこともあります。よく「痛いので乳癌ではないかしら?」と受診 される方がいますが、痛みの場合乳腺症であることがほとんどです。
結局、定期検査が一番大切で、触診の他、乳腺X線撮影、超音波が主なものです。全くしこりを触れずに他の検査で乳癌が発見されることもあります。これで 乳癌が疑われると、乳腺に直接針を刺して細胞を採取する吸引細胞診が行われます。しかし、この検査で正常でも他の検査で癌が強く疑われる場合、腫瘤の一 部、あるいは全部を切除する試験切除が必要となります。
乳癌の手術法は随分変わってきており、現在では必要最小限の切除をするというのが一般的です。2センチ以下の乳癌では乳房を温存し乳癌を含めた部分切除 を行うのが普通で、これに放射線治療を加えれば、大きく取った場合と生命予後には関係ないというアメリカでの大規模な調査があって、現在の縮小手術の根拠 になっています。乳房を温存出来ない場合でも、胸筋を全部温存する方法(オーキンクロス法)、胸筋の一部のみを切除する方法(ペティー法)などが行われま す。腋のリンパ筋切除は同時に行われますが、昔の胸筋を全て切除する方法はほとんどなくなりました。
手術の場合、担当医との相互理解が大切で、術前に分からないことは全て、質問、理解したうえ、自分の希望も遠慮なく伝え、手術法を相談のうえ決めるという態度が必要になります。

過去のホームドクター