広報こしがや

2003年08月01日

No.381 停留精巣(睾丸) 越谷ふれあいクリニック 大橋 忍

Q.1歳健診の時に医師から、「右の精巣を触れません。停留精巣という病気であり、いずれ手術が必要かもしれません」と伝えられました。停留精巣とはどういう病気なのですか?また本当に手術が必要なのですか?教えてください。
A.はじめに、停留精巣という病気についてお答えします。胎児のときには精巣は卵巣と同様におなかの中に存在します。
しかし、胎児の発育が進むにしたがって精巣は陰嚢いんのうに向かって下降していき、赤ちゃんが生まれてくる頃には陰嚢内に固定されます。
この精巣の下降が途中で止まってしまった状態が停留精巣です。原因は不明ですが、おなかの精巣を陰嚢まで導く帯(導体)が、陰嚢の低部にではなく、陰嚢の付け根部分に付着してしまった物理的障害説、またはホルモン分泌異常説などがあげられています。
停留精巣には精巣を触知できるタイプ(移動性精巣、陰嚢上部精巣)と触知できないタイプ(そけい管内精巣、腹腔内精巣)に分けられます。
手術の必要性に関しては、陰嚢内で精巣を触れたり触れなかったりする移動性精巣は程度が軽く、将来陰嚢内に自然に固定されることが多く、経過観察する事が重要です。
陰嚢上部やそけい管内、腹腔内などの常に高位置に存在する精巣では手術による治療が必要となります。その理由は、おなかの中では陰嚢内より1~2度温度が高く、精巣が高位置に長期間とどまるとその高温環境により精巣の細胞が変性し、精子形成の能力が低下し将来の不妊の原因となったり、悪性化してがんになる確率が高くなるためです。また、精巣が陰嚢にきちんと固定されていないため、精巣が自然にねじれやすいとか、そけい部の精巣は陰嚢内のものと比較して下腹部の打撲により外傷を受けやすいなどのさまざまな問題が出現してまいります。
手術時期に関しては、最近ではできるだけ早い時期に手術を行う傾向にあります。まずは、かかりつけ医から専門医を紹介してもらいましょう。

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