広報こしがや

2003年12月01日

No.385 鬱病について 南埼玉病院 瀬戸 睿

鬱病は率直なところ厄介な病気です。まず診断が難しく、鬱状態を示していてもすべてそれを鬱病と言う事は出来ません。最愛のお子さんを突然亡くしたり、突然癌がんと宣告されたりリ、ストラにあって職を失ったりすれば、落ち込むのは当たり前です。しかしその状態を鬱病と診断するのはなかなか難しく、また多くの人は鬱状態であっても診察を受けたりせず、時の経過とともに自然に癒されています。鬱病は時がいくら経っても癒されることがなく、どんどん深みにはまっていくため、周囲からおかしいと思われ来院し、鬱病と診断されることがほとんどであります。それに鬱病と診断されても、その原因を探ることも大変です。たとえば肝炎の治療薬であるインターフェロンを注射した場合や、甲状腺機能低下症の人や脳梗こう塞そく後にも鬱病が見られることがあります。このような原因で鬱病になる場合と原因がはっきりせず、自然に鬱病になる内因性の鬱病と言われるものや、ストレスが原因で鬱病になる心因性の鬱病もあります。もちろんそれらの複合したものもあり、それらをきちんと鑑別することが必要です。
次に治療です。まずその人にあった薬を見つけるのが大変で、しかも見つかってもその薬が効果を現すまでに時間が掛かります。ですから直ぐに効かないといって止めてしまうと元も子もなくなってしまいます。またカウンセリングの必要な鬱もあります。どんな治療がその人に最適なのか見つけ出すのに医師は大変苦労します。しかも鬱病になっているその人自身は、病気と思っていることは少なく、自分の性格や意志が弱いからだと思い込んでいることも多いのです。ですから治ると患者さんに説明しても信用してくれないこともあり、またきちんと薬を飲む人は欧米の調査では16分の1というデータもある位です。
鬱病はありふれた病気ですが、治療を受ける人の割合がかくも少ないということは残念です。落ち込んで何もやる気が起こらなくなったらすぐに精神科に行き、相談されることが何より大事なことです。

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