広報こしがや

2004年06月01日

No.391 心因性難聴について 登坂耳鼻咽喉科 登坂 薫

Q.小学校4年生の女の子ですが特に聞こえは悪くないと思っていたのですが、学校の検査で難聴を指摘されました。本当に耳鼻咽喉科へ行った方がいいのでしょうか。
A.心因性難聴という病気があり、その可能性がありますのできちんと検査を受け、治療を受けてください。
心因性難聴とは聴覚系に病変がないのに聴力検査で異常所見が得られる疾患で、一種の心理反応の異常により起こります。学校健診に聴力検査が導入されて、難聴の所見が児童生徒の心の葛藤かっとうを訴えるメッセージとしてとらえられるようになってきました。
(頻度)好発年齢は6歳から11歳ころで、女児に多く男女比は1対2です。発症率は小学生の0.05%、中学生の0.03%です。
(難聴の特徴)聴力検査では難聴を示しますが、日常生活では普通の人と変わらず、聞こえは良いという矛盾があります。もちろん家族は難聴に全然気がついていません。
(原因)人の心に強いプレッシャーがかかると、その人の精神的、神経的な活動に異常が起こる事があります。例えば、子どもでは心因性の咳、チック、頻尿、大人ではほかに失声、健忘などがあります。心因性難聴もそれらと同じもののように思われます。背景因子には家庭に関するものと学校に関するものがあります。前者には家庭の不和、両親の離婚、厳しいしつけなどがあり、後者にはいじめ、担任と合わない、学習面の遅れ、クラブ活動、転校などがあげられます。また眼科の視野検査で視野が狭くなる者も多く見られることから、周りの嫌なことは聞きたくない、見たくないという心理状態が原因となっています。
(治療)小児の心理的ストレスとなっている原因を追及し、それをなくすように医師、家庭、学校が一緒になり生活の指導をします。また日常生活には支障がないので、小児に聴覚系の異常はないことをよく説明し、周囲で温かく見守ることが肝心です。
(経過)3年以上の経過を見ますと、全体の67%が回復・改善しています。また回復した例の50%は6カ月までに回復しています

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