広報こしがや

1997年07月15日

No.283 麻酔について 水上 智

「麻酔」という術語はすでに江戸時代の医書にみられるそうです。現在、私たち麻酔科医が手術の際に用いる麻酔法は全身麻酔だけではなく、部分麻酔といわ れる硬膜外麻酔、脊椎(せきつい)麻酔等があります。これらの方法を単独あるいは併用して麻酔を行います。私たち麻酔科医は手術という侵襲(しんしゅう) から患者さんを守る立場にあります。したがって、選択する麻酔法はまず安全第一であり、患者さんにとって快適でなくてはなりません。また、手術をする側に も快適に手術できる環境を提供しなくてはなりません。  手術に伴う最大のストレスは「痛み」です。全身麻酔だけでも手術中に痛みを感じることはありません。しかし、手術後の痛みまではとれません。手術後もっ とも痛いのは24時間くらいまでだといわれています。そこで私たちは手術中から手術後を通じて痛みをとる努力をしています。痛みそのものも問題ですが、痛 みのために十分な呼吸ができない、手術の傷の治りが遅れるなどの問題も含んでいます。したがって痛みを抑えるということはとても重要です。  安全に麻酔を行うためには事前に患者さんのことを十分に知らなければなりません。以前に何か手術を受けたことがあるか、血縁者に手術を受けて何か問題の あった人がいないか、手術を受ける病気以外に治療を受けている病気はないか、もしあれば薬を飲んでいないか、などです。これらの情報と手術前の検査結果お よび手術内容を検討して麻酔法が選択されます。もちろんその方法を患者さんに説明し承諾が得られて初めて最終的に決定されます。  もし、みなさんが手術を受ける機会があり、麻酔科医の訪問を受けた際にはどんな些細(ささい)なことでも分からないことはどんどん質問してください。手 術に大小はあっても麻酔に大小はありません。安全に、そして快適に手術、麻酔を受けるためには、患者さんも積極的に手術、麻酔について知ろうとすることが 大切です。私たち麻酔科はそのような患者さんの要求にできる限り応えられるように今後もよりいっそう努力していきます。

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