広報こしがや

2009年09月01日

No.454 糖尿病のうそ?ほんと? 越谷レイクタウン内科 藤本 まどか

糖尿病は、予備軍を含めると、日本で2210万人と推計されています。身近な病気だけに会話に上る機会も多く、さまざまな誤解・迷信も生まれているようです。今回は糖尿病の「都市伝説」を検証します。
▽糖尿病の薬は一度始めるとやめられない→×。糖尿病の治療薬には、インスリン(血糖値を下げるホルモン)をたくさん出させる薬、インスリンの働きをよくする薬、糖分の吸収を穏やかにして食後の血糖値を上げにくくする薬、インスリン注射などがあります。食事療法や運動療法によって、薬を使わなくても、よい血糖値を保てるようになることもよくあります。こうなると薬を使った治療からは卒業です。
▽糖尿病は不治の病だ→△。糖尿病の多くは体質が根底にあり、一度よくなってもまた高血糖に戻ってしまう場合があるので、糖尿病は一般に「治癒」と言わず、「コントロールがよい」と表現します。しかし糖尿病はうまく付き合っていけば自覚症状なく、長寿を全うできる疾患であることから、「不治の病」という悲壮な言葉は似合わないように思います。新薬の開発、膵島移植、遺伝子治療など治療も進化しており、×と言える日も遠くはないかもしれません。
▽インスリン注射は恐ろしい、なるべくしないほうがよい→×。インスリンは毎日自分でお腹などに注射します。予防接種や採血などで使う注射器ではなく、ペン型の注射器が主流となっており、使い方も随分簡単になり、最近は80代で開始する患者も少なくありません。針もとても細くなり、その痛みは「蚊に刺される痛さ」に例えられます。微調整ができ、低血糖時も回復しやすく、副作用も少ないうえ、すい臓を休ませることができるため、体にやさしい治療と言えます。インスリンを一時的に使用した後、飲み薬の治療に変更したり、薬をやめられることもよくあります。主治医からインスリン注射を勧められたら、闇雲に拒否せず、積極的に向き合ってみてください。
▽糖尿病になったらおしまいだ→×。糖尿病は放置していると確かに重大な結果を招きかねませんが、きちんとコントロールすれば「元気で長生き」が可能な疾患です。インスリン注射をしながらでも、プロスポーツ選手として、女優として、ビジネスマンとして、母として…。さまざまな分野で活躍している方がたくさんいます。むしろ定期的に病院に通い、検査を受けることで、健康に対する意識が働き、問題意識を持たない人よりも「健康的」に過ごせる可能性もあると思います。
糖尿病と診断されたら…。「元気に長生き」に向けた生活を意識するきっかけをもらったと考え、前向きに取り組んでいきましょう。

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