広報こしがや

1997年12月01日

No.291 放射線と医療被曝 手島 泰明

医者が医療を目的として患者に与える放射線被曝(ひばく)のことを医療被曝といいます。日本の法律では人間に対して、放射線をあびせることの決定権をも つのは医師資格を有する者のみです。日本人は一般に放射線に対してナーバスであるといわれていますが、最近の原子力発電所の事故の問題についても神経質に なることは科学的にはいいことと思われます。
医療被曝についてはどうでしょうか。医療被曝をコントロールしているのはリスク(危険)と利益の関係で、リスクは放射線を使用した検査でおこるかもしれ ない患者さんの不利益のことで、被曝がリスクになります。被曝による有害効果とは? 歴史的に証明されていることでは発癌(がん)があります。X線が発見 された1920年代に放射線をあびた研究者に癌が多く発生しました。この当時は防護ということを全然考えていなかったためです。医療被曝でこのような大量 被曝は少ないですが、例えば胸のレントゲンを撮った場合に、このような少量のX線があびせられた場合に、理論的にはある確率で発癌の可能性は計算上ではあ り得るといわれています。
利益とはⅩ線の検査をすることによって確実な診断がつくことです。確実な診断がつくなら、利益はどんどん増えることになります。ですから、Ⅹ線がこわい からといって、検査をはじめから否定するのは疑問があります。必要だからやる。被曝の量はできるだけ下げる努力はする。Ⅹ線の量は診断できるギリギリの低 いところで行っています。病気の診断にはリーズナブル(合理的)なⅩ線被曝は必要であるということになります。

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