広報こしがや

2013年09月09日

№502 不育症について 堀中医院 堀中俊孝

不妊症という言葉はよく耳にしますが、不育症はあまり一般の方には馴染みのない言葉です。不育症とは、妊娠はするものの繰り返し流死産によって生児を得られない状態を示し、1人も子供がいない方にとっては深刻な問題と思われます。3回以上連続して流産を繰り返す場合、習慣性流産と定義され不育症も念頭に置かなければなりません。夫婦および胎児の不育症の原因としては、染色体異常、子宮形態異常、内分泌学的異常、免疫学的異常、血液凝固障害などが考えられます。
 原因の詳細は染色体異常が約5%の頻度でみられ、形態異常で一番多いのは、子宮筋腫、子宮奇形などです。内分泌学的異常では、黄体機能不全、糖尿病、甲状腺機能亢進症や低下症、高プロラクチン血症などがあります。免疫異常としては自己抗体が陽性になることが知られており、この抗体は抗リン脂質抗体とよばれています。血栓症との関連が明らかになっている抗体であり微少血管に塞栓ができて不育症に至ります。抗リン脂質抗体による不育症の治療としては低用量アスピリン療法、ヘパリン療法、免疫グロブリン療法などがあります。平成24年7月より、ヘパリン在宅自己注射が保険適用となりましたが、不育症では健康保険は使えません。不育症の中で保険診療のできる検査は抗核抗体、抗リン脂質抗体、抗DNA抗体の3種のみで、その他は自費負担となります。 そこで、不育症の保険診療の適用を広げ、一部の検査や治療を追加して認められる助成を行う自治体も増えてきています。自治体の不育症診療に対する助成が、初めて平成22年4月に岡山県真庭市で始まりました。平成23年11月時点では、30以上の市町村で行われていますが、助成の対象は自治体が認定した不育症指定医の行う不育治療に限定されており、今なお一般産婦人科で行った不育症診療では助成が下りることはありません。ですから現在は、指定医に紹介することをお勧めしています。
 今後、不育症の指定医が増え、不育症に悩んでいる方の精神的ケア、およびその助成を自治体とともに考えていけるようになることが求められると思われます。

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