広報こしがや

2014年05月09日

№510 耳かきでの損傷  青木耳鼻咽喉科 青木古尚

耳かき。気持ちいいですね。国内旅行でどこに出かけても、観光地の土産屋で耳かきが売られています。入浴後に綿棒でコチョコチョしたり、耳かきでガシガシかいたりする方が多いかと思います。しかし、この耳かきが大変な病気を引き起こすことがあるのです。  まず、綿棒や耳かきが実際に接する耳の中(耳の穴)についての話です。耳の入り口からその奥の鼓膜までの3~4㎝の間を外耳道といいます。この外耳道の壁、実は手前側(入り口側)三分の一と奥側(鼓膜側)三分の二で性質が異なるのです。奥側の壁は頭蓋骨に直接薄い皮膚が張り付いていて乾燥しているのに対し、手前側の壁は顔の皮膚などに性質が近く、厚みがあり、産毛が生えていて脂分を出す皮脂腺も発達しています。この脂分が耳あかの元になります。自然に発生した耳あかは外耳道の壁を保護し、雑菌の繁殖を抑えるなどの効能がありますが、頻繁な耳かきは反対に外耳道を傷つけてしまいます。これが外耳道炎へつながるのです。傷ついたことにより、細菌が繁殖しやすくなり外耳道炎をおこします。すると痛みや灼熱感やかゆみ、耳閉感や外耳道の湿った感じなどが症状として出ます。弱い細菌が炎症の原因ならば通院は短くて済み、比較的治りは早いです。しかし炎症のかゆみに負けて更にかき壊すと、緑膿菌などの難治性の細菌、更に真菌(カビ)が繁殖してしまいます。こうなると完治まで長い時間がかかることがあります。また糖尿病や免疫疾患など全身状態の悪い方は、繰り返しやすく悪化しやすいです。  外耳道炎にならない為には無理な耳かきをしないことです。耳あかがたまったなとか、耳の中が気になって仕方がないなどの場合は、遠慮無くお近くの耳鼻科をお訪ねください。耳掃除だけでの受診でも全く問題ありません。もし、耳かきをして外耳道炎の症状が出てきてしまった場合は、軟こうなどを自己判断で使用せず、速やかに耳鼻科を受診し、病状にあった治療を開始していくようにしましょう。

 

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