広報こしがや

2014年08月05日

№512 予想以上に有害なタバコの煙  大袋医院 西片 光

愛煙家にとって禁煙はなかなか困難なことです。しかし喫煙習慣はきわめて健康を害すると考えるべきです。
 タバコの煙の中には、血管を収縮させて血圧を上げる、動脈硬化を起こす、ガンを誘発する、気道を過敏にする、肺に炎症を起こす、などさまざまな作用を及ぼす有害物質が含まれています。なかなか禁煙できないのはニコチンの依存性が麻薬と同等以上に強力だからです。喫煙者の寿命は、喫煙しない人より約10年短いと言われています。これはタバコ1本あたり5分半から6分間命を縮めている計算になります。自分は健康だと思って禁煙外来を受診する方のかなりの人が、実はすでに慢性閉塞性肺疾患(COPD)となって肺を病んでいるか、その予備軍です。
 さらに、喫煙する本人以外の人がタバコの煙を吸い込む受動喫煙にも多くの問題があります。タバコの先から立ちのぼる紫色の副流煙には、喫煙者が直接吸い込む主流煙より毒性の強い物質が多く含まれています。残念ながら、煙を減らそうとして換気扇の下で吸っても、喫煙した人の血液に入った有害物質が1時間以上にわたり肺から吐き出されるため、ほとんど効果はありません。同居する家族への影響は大きく、喫煙者の子供に気管支喘息や繰り返す咳が多くなります。また配偶者自身は喫煙しなくても肺がんや心筋梗塞の発症率が2~3倍に増加すると言われています。さらにペットへの影響も指摘されています。ペットの体調不良や一部のガンは、タバコの煙と関係するようです。床に落ちたタバコの粒子状の有害物質が、毛づくろいによってペットの体内に取り込まれ、さまざまな悪影響を及ぼすと考えられています。
 ニコチンやタールの少ないいわゆる軽いタバコでも、周囲への環境汚染は変わらず、吸い方によっては喫煙者本人が摂取するニコチンやタールの量も変わりません。
 禁煙の動機付けに自分への害だけでなく他人への害をも考えることが有用ではないでしょうか。

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