広報こしがや

2015年02月27日

№520 もの忘れ外来を受診する意味  秀峰会 北辰病院   認知症デイケア佳境 福井 和彦 

 もの忘れ外来には、今日の日付がわからなくなったり、少し前のことをすぐ忘れ何度も同じことを聞いたり話したりする等と、ご家族が心配して来院されることがよくあります。診断は経過の中で決まり、診断によっては抗認知症薬が使用できます。ただ認知症自体は変性疾患であり不可逆です。
 では何のために受診するのでしょうか? ご本人やご家族が認知症だと思っていても実は別の症状のことがあるからです。加齢などのため、今まで内服して問題なかった薬剤が、せん妄(わけのわからない状態)を起こすことがあります。この薬剤性せん妄は正しく診断し休薬して経過を診る必要があります。人生の出来事でうつ状態に陥った場合や、骨折などの入院中に夜間せん妄状態になった場合は、短期間少量薬物療法で回復する可能性があります。また、脳外科的原因で認知症に類似した症状が出ることもあります。
 さまざまな症状や経過をしっかり診察し、ご家族も安心して話を聞いてもらえる信頼できる医師・医療機関を持つことが大事です。認知症・もの忘れ相談医は越谷市医師会のホームページで紹介されています。
 認知症と診断されると、市役所で介護保険申請ができ、介護度によって介護保険サービスが受けられます。地域包括支援センターや居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当になりケアプランを作成します。また、医療保険(自立支援医療の精神通院医療)でのデイサービスなども利用できます。ご本人やご家族の状況に応じて、介護保険サービス、医療保険サービスを上手に組み合わせて活用することにより、ご本人の安定した生活、ご家族の安心できる環境を維持し休息を確保できるようになります。
 ライフステージによって、一つの医療機関だけでなく在宅医療、各診療科、入院可能な病院との連携が欠かせなくなり、ケアマネジャーを中心に相互に協働する必要があります。その入り口とかけはしがもの忘れ外来の役割と思っております。

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