広報こしがや

1998年07月15日

No.304 最近の心臓外科手術 今関 隆雄

心臓手術の中で狭心症に対する冠状動脈バイパス手術も心臓弁膜症に対する手術も最近では驚くほど成績が向上していますが、心臓外科手術の宿命として、心 臓を一時止めなくてはならず、生命維持装置である人工心肺装置を使い、胸の真ん中を大きく開ける胸骨正中切開法を標準術式としていました。
費用は保険請求額でおよそ300万円から400万円で、入院日数は約1カ月、社会復帰まで2~3カ月かかります。
数年前よりこのような手術法に対してアメリカを中心に大々的な見直しが始まり外科医から見た安全性だけでなく患者にとっての利益という点から、より小さ な傷で痛みが少なく、早く動けるように、より費用が安く、入院期間が短く、社会復帰も早くという点に対して答えを求めていったのです。
心臓を停止させること、人工心肺を使うこと、大きな皮膚切開、胸骨全切開が問題となりました。
その結果狭心症手術では左前胸部を約7~8㌢切開するだけで、心臓を停止させず、人工心肺をつかわない冠状動脈バイパス手術が取り入れられました。
拍動している心臓の表面を走る直径1・5~2㍉の冠状動脈を縫合するための薬、機械、技術も発達してきました。
しかし、残念なことにこの方法では従来の方法に比べて1~2本のバイパスしかできません。弁膜症手術では弁が心臓の内部にあるため現在のところ、どうしても人工心肺を使って心臓を止めないと内部が安全に操作できません。
しかし傷を小さくすることはできるようになり、以前の傷は30㌢位はありましたが今では10㌢前後です。
傷の痛みには個人差があり傷が小さいからといって大きい場合より痛くないかというと必ずしもそうではありません。でも手術してみてまず気がつく点は廊下を歩行できるようになるのが早い、退院が早い、傷が小さいので本人があまり大げさに考えなくなったことです。
これだけでもせまい手術野の中で集中して仕事をしたかいがあったというものです。これらは低侵襲(ていしんしゅう)手術といわれています。機械も技術も進歩発展していきますので今現在の最高の医療を提供することがわれわれの使命と考えています。

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