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2016年03月31日

№533 夜間頻尿で困っていませんか  ふじおかクリニック 藤岡正志

年齢を重ねていくと、何らかの排尿の問題を抱える人は増えていきます。排尿の問題は昼間の頻尿、残尿感、排尿困難、尿意切迫感(尿意を我慢できない)、尿失禁など多岐にわたりますが、ここでは生活の質を大きく損なう夜間頻尿を取り上げます。
 夜間頻尿とは、夜間1回以上排尿のために起きることをいいます。本邦では40歳以上の男女の約70%にあたる約4500万人が該当します。ただし、実際の生活で問題になるのは2回以上のことが多いです。夜間頻尿の原因は、夜間の尿量が多い夜間多尿、膀胱に尿が充分にためられない膀胱容量の減少、睡眠障害に分けられます。夜間多尿の原因は、高血圧、心不全、腎機能障害などがあり、昼夜問わず多尿になるものとして、糖尿病と水分の過剰摂取が挙げられます。改善するためには泌尿器科だけでなく、内科との連携が重要になってきます。膀胱容量の減少は、脳卒中やパーキンソン病などの脳の疾患や脊髄の疾患、前立腺肥大症や過活動膀胱などの尿路の疾患が原因で起こります。膀胱の老化や原因不明のことも少なくありません。睡眠障害の主なものは、眠りが浅くなるために、目が覚めるたびにトイレに行くというものです。夜間頻尿と睡眠障害はどちらが原因と結果ということではなく、互いに影響しあうものともいえます。不眠症、睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群なども原因となります。
 夜間頻尿が2回以上の方は1回以下の方に比べて転倒して骨折するリスクが2倍、死亡率も上昇するという報告が東北大学からありました。夜間にトイレに行くために暗がりで転倒する、睡眠不足のため判断力が低下して転倒することなどが原因として指摘されています。夜間に排尿すること自体は生命に影響しませんが、夜間頻尿が骨折や死亡率に影響する可能性が示されたことは大きなインパクトがあります。
 治療は、個々の患者さんの夜間頻尿の原因を問診や検査で明らかにし、その原因に合わせて行います。主にお薬による治療となります。夜間頻尿をはじめ、排尿に関して気になる症状がある方は、歳のせいだから仕方ないと諦める前に、一度泌尿器科を受診してみてはいかがでしょうか。

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