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2016年07月12日

№536 疥癬をご存知ですか? 滝口皮フ科 瀧口光次郎

疥癬は、ヒゼンダニという小さなダニが人の皮膚に寄生することによって発症する皮膚感染症です。このダニは、成虫でも体長が約0・4ミリで肉眼では確認が難しい大きさです。卵からふ化して成虫になるまで約2週間かかります。その後は約1カ月に渡って皮膚表面を歩き回りながら皮膚の角質に穴を掘って潜り込んで産卵を続けます。人の体温がこのダニの生活に適しており、人の肌から離れると長くは生きていられません。疥癬の発症は、ヒゼンダニが感染して約1カ月の潜伏期間を経て皮膚に赤いブツブツやかゆみを生じます。かゆみは特に夜間に激しくなり、不眠になる場合もあります。通常の疥癬ではダニの数は数十匹までですが、増殖すると百万匹以上となり、角化型疥癬と呼ばれて強い感染力を呈します。角化型疥癬の場合には肌はザラザラと厚くなり、カキの殻の様になってボロボロとはがれ落ちるようになります。  感染の経路は人の肌と肌の直接接触が主ですが、衣服や寝具を介して感染する場合もあります。そのため家族内で感染したり、老人ホームや病院内で集団感染する場合があり、注意を要します。診断は、皮膚の一部をピンセットやハサミで取って顕微鏡でヒゼンダニの虫体や卵を確認します。治療には塗り薬と飲み薬があります。塗り薬にはフェノトリンローション、クロタミトン軟こう、硫黄製剤があります。飲み薬にはイベルメクチン(ノーベル賞を受賞した大村博士が開発した薬)があります。
 特に小児や妊婦、授乳婦、高齢者では治療薬による副作用が出ることがあるため、医師とよく相談して治療薬を選ぶ必要があります。
 治療と共に感染の拡大を防ぐことが必要です。方法としては寝具や衣服等の共用を避けることが重要です。ヒゼンダニは高熱や乾燥に弱いため、洗濯物を50度以上のお湯に10分以上浸したり、乾燥機を使用することも感染拡大を防ぐことに有効です。

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