広報こしがや

2018年01月05日

NO.550 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)こしがや胃腸内科・皮膚科 鶴田 史

あまりお酒を飲まないのに健診や人間ドックなどで肝臓の数値が高い、脂肪肝などと言われることはありませんか? 以前から、お酒をたくさん飲む人はアルコール性脂肪肝を引き起こし肝炎、肝臓の線維化(肝臓の組織が硬くなること)から肝硬変、そして肝がんが発生することが知られていました。しかし最近では、お酒を飲まない人でも脂肪肝を引き起こし大量飲酒者と同様な経過をたどる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気があることがわかりました。
 お酒を飲まなくても脂肪肝を認める人の割合は、実は20~30%もいるといわれています。大部分は単なる脂肪肝のままですが、20%程度(全人口の3~5%・越谷市民で換算すると1万人以上も)にNASH(肝硬変へ進む可能性のある脂肪肝)が隠れていると推定されています。そしてNASHは10年間で5~20%が肝硬変に進展すると報告されています。
 肝がんの原因は20年前にはB型肝炎、C型肝炎を原因とするものが80~90%以上を占めていましたが、最近ではB型でもC型でもない肝がんが30%を超えています。それは、ウィルス性肝炎治療の進歩による部分もありますが、NASHの増加も大きな要因と考えられています。単なる脂肪肝やただ単に肝臓の数値が高いだけの状態ではなく肝硬変、肝がんのリスクをはらんだ病気なのです。
 NASHは、高血圧、糖尿病、脂質異常症と同様に生活習慣病の一つとされ、過食や運動不足からくる内臓脂肪型肥満が発症に関与しています。薬物療法が必要なケースもありますが、生活習慣の見直しにより減量をするだけで肝機能が改善し、肝臓の線維化が予防できる患者さんが数多くみられます。また、減量することでNASHの治療にとどまらず、さまざまな生活習慣病の予防、治療にもつながります。
 肝臓は沈黙の臓器といわれ病気が進行するまで症状が現れることがなく、NASHもまた同様に知らぬ間に肝硬変、肝がんになっていたというケースが決して少なくありません。そのような悲劇を避けるために単なる脂肪肝と高をくくらず、生活習慣を見直し、定期的な血液検査や超音波検査による脂肪肝の評価、肝硬変・肝がんの早期発見を行っていきましょう。

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