No.295 触ってみつけるわたしのしこり 赤尾 周一

江戸時代、20歳を過ぎると「年増」、30歳以上は「うば桜」と言われました。これは母体の健康のため20歳以前に出産を終えていたからです。当然、 20歳以前に授乳という乳腺(せん)の活動があったわけです。平成の今、女性の寿命が伸び、出産年齢も上がり出産回数も少なくなっています。このような社 会現象が原因のすべてではありませんが、最近乳がんが増加し、しかも年齢が若くなっています。今さら、社会現象を戻すこともできませんから、乳がんに正し く対処するには早期発見をする以外にはありません。
乳がんは自分で見つけ出せる唯一のがんと言っても過言ではありません。そのためには自分で乳房の触診(さわってみること)をするにつきます。わたしの病 院へ5ミリのしこりを見つけて来た患者がいます。まさかと思いつつ患者に言われてしこりを切除し、顕微鏡で調べますと乳がんと診断されました。患者の方が 自分の体のことはよくわかるのかも知れません。こんな小さなしこりは器械にかけてもわからない場合がほとんどです。今のところ器械でのがんの診断率と触診 でのそれはあまり差がありません。
触診にも唯一のこつがあります。それは触診する日を選ぶことです。閉経前の人は生理が終了した日から数えて1週間目だけに触ることです。これ以外の日は 触ってはいけません。閉経後の人は月に一度日を決めて触りましょう。そしてはっきり触れるしこりをみつけたらすぐ外科の専門医を受診し、器械にかけたり、 必要に応じて組織をとって顕微鏡で調べてもらいます。ただし、しこりイコール乳がんではありませんし、たとえ乳がんと診断されても、乳がんはなおりやすい がんですから積極的な心構えを持つことが大切です(心構えが乳がんの予後に影響するという統計も出ています)。  最後に、乳房のいたみだけでがんを心配して受診する患者がおりますが、これは間違いと言ってよいでしょう。わたしは原則的に乳がんには痛みはないと考え ています。痛みの原因こそ文頭に述べた授乳年齢の遅れにあると思います。いずれにしても、秦触ってみつけるわたしのしこり紳(患者)、秦触ればわかるあな たの乳がん″(専門医)です。

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