広報こしがや

2019年12月06日

NO.577 子どものアレルギーの最近の話 きたこしキッズクリニック 永沼 卓

子どもの食物アレルギーにおける最近の話題について、お話したいと思います。
【免疫寛容】
 もともと人の体には、異物などから体を守る免疫反応がありますが、腸を通過する食べ物に対しては、逆に異物だと判断しないようにする工夫があります。十分に消化分解をしてから吸収することもその一つですが、これら腸管から吸収したものが異物ではないと体に記憶させて免疫反応を起こりにくくする『免疫寛容』という作用も備わっています。そのため、心配だからという理由だけで離乳食の開始を遅らせることは、逆に食物アレルギー発症のリスクになることもあるため、現在は推奨されていません。また、乳幼児期に発症する食物アレルギーの一部は、成長とともに自然に治ることが多いですが、これらの作用の発達が関係していると考えられています。
【経皮感作】
 ある抗原を異物だと認識して体が覚えてしまうことを感作といい、皮膚に食物抗原がつくことによっておこる感作を、『経皮感作』といいます。
 最近の研究から、湿疹などで皮膚のバリア機能が低下しているところで、この『経皮感作』が起こりやすいことがわかってきて、食物アレルギー発症のリスクとして注目されています。そのため、湿疹などを乳児期早期からしっかり治療することによって、食物アレルギーの発症を減らせるかどうかという研究もされています。
【食物経口負荷試験】
 食物アレルギーの診断において、最も重要なのは、どんな食事をして、どれくらいの時間がたってから、どのような症状が出たのかなどの情報です。実は、血液や皮膚などの検査は、参考にすることはありますが、その結果だけでは確定診断はできません。最も確実な診断方法は、『食物経口負荷試験』という、実際に食べて症状が出るかどうかを確認する検査になりますが、設備の整った専門の病院で行う必要があり、またすべての症例で必要となるわけではないため、この試験が必要かどうかは、まずはかかりつけ医にご相談ください。

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